ウッドオパール?年輪に見えるボルダーオパールの正体は?

    ウッドオパール?年輪に見えるボルダーオパールの正体は?

     

    このブログには、作者TAKIが現地で経験して育んだボルダーオパールに関する知識や情報、実際の体験から得たアイディアなどが惜しむことなく記されています。多くの方にシェアしていただければ幸いです。

     

    今回のテーマは「年輪のように見えるオパール」、この不思議な外見を持つボルダーオパールについてお話ししていきます。

     

    このオパールの正体は?

    知る限り現時点(2023年5月)での日本語での情報は皆無

     

    年輪だったり木目のように見えるからでしょう、ウッドオパールと誤解されることも多いこのオパールですが

     

    このオパールはボルダーオパールのうちの一つ、マトリックスオパールに属する「バブルバンド」と呼ばれるタイプのオパールになります。

     

    日本では2018年あたりからチラホラ見かけ始め、2023年現在では見かける機会も非常に多くなってきましたね。

     

    遊色の特徴上、残念ながら良質なものでも静止画像での映えは弱いものが多いですが

     

    実際にそれらを手に取り動かすと「ピカリピカリ・キラリキラリ」と、フラッシュ系・ピンファイヤー系の美しい遊色を楽しむことができます。

     

    今では人気のオパールとして確固たる地位を築きつつあるこのオパールですが、10年前の現地での「この原石の立ち位置

     

    実は決してエリートなタイプのボルダーオパール原石ではなかったのです。

     

    まずはそのへんから、裏話的な要素も交えながらお話ししていきたいと思います。

    1. なぜエリートな原石ではない?

    クオリティ・グレードの両面において、非常に優秀で価値ある原石もありますので一概には言えませんが

     

    ほとんどの場合は崩れやすい」・「崩れてしまう、すなわちクオリティの面で研磨にあまり適さないタイプの原石だからです。

     

    もろくて崩れやすいを英語で言うと “CRUMBLY “(※クランブリー)、とにかくこの単語を使って形容されることが多い原石でした。

     

    英語のレッスンみたいになってしまいますが、“It’s difficult to deal with.”「カットするのが大変だよ」

     

    ベテランのカッターでさえこう言い、この原石をルースに仕上げることに消極的だったのを今でもはっきりと覚えております。

     

    理由は明確、このようなタイプの原石をルースにすると、十中八九は目立つ穴や欠けなど「許容範囲外のマイナス要素」を持つルースに仕上がってしまうからです。

     

    そして先ほども述べたように崩れやすい部分もあるため、手間暇が掛かり作業効率も決して良くありません。

     

    このような理由から、この原石はルースクオリティと標本クオリティの中間的な立ち位置の原石であり、積極的にルースに仕立てられるエリートな原石ではなかったのです。

     

    そう、これが今からちょうど10年ぐらい前、2013年ぐらいの話だったと思います。

    2. エリートなボルダーオパール原石とは?

    せっかくの機会ですので、少し寄り道させていただきます。

     

    それでは一体、どんなタイプの原石がエリートな原石、すなわち「研磨に適した」ボルダーオパール原石なのでしょうか?

     

    仕上がりの状態を考慮するのであれば、まずはこの3点

     

    ・比較的穴の少ないスムーズな面を持っていること

     

    ・クラックが少ないこと

     

    ・マイナス要素を取り除くなどの形成作業を終えた後でも研磨に十分なサイズが残っていること

     

    研磨中に崩れて次から次へと穴が出現なんてことも嫌ですので、贅沢を言えば崩れにくいタイプの母岩、画像にあるようなアイアンストーンタイプの原石が理想です。

     

    <<アイアンストーン母岩>>

     

    硬い素材のため、使う道具によっては手間暇かかる場面もありますが、丁寧に仕上げればガラスのようにピカピカに仕上がります

     

    もちろん、その他の種類の母岩を持つ原石(泥岩・砂岩・礫岩)でも、下の画像のように状態が良ければそれに比例して状態の良いルースに仕上がります。

     

    <<その他の種類の母岩>>

     

    どんな原石でもルースにできる、これは否定できない絶対的な事実です。

     

    ただ、作業効率を考え、さらに比較的マイナス要素が少ないルースに仕上げたいのであれば

     

    エリートな原石、すなわちルースクオリティ、またはそれに準ずるクオリティの原石を手に入れる必要があるのです。

     

    余談ですが、クオリティ・グレードの両面において優れているバブルバンドオパール原石はこんな感じです。

     

    <<ハイグレードAAA>>

    ボルダーオパール販売原石(ミィディアムハイ・ハイグレード)

     

    ※現在コレクターさん所有

    3. ルースクオリティの原石って高いの?

    もう完全にバブルバンドオパールの話ではなくなっていますが、このへんの考え方はボルダーオパールの「ルース」と同じです。

     

    すなわち、高額な原石もあれば、安価で購入可能な原石もあります。

     

    いくらルースクオリティの原石だと言っても、遊色が入っていなければボルダーオパールとしての価値は低い」

     

    このように考えるのは当然ですので「取引価格が高額」であってはいけません。

     

    逆に、ルースクオリティ(またはそれに準ずるクオリティ)の原石でジェムクラスの美しい遊色を持つものであれば、2023年現在、高額を通り越しての超高額です。

    4. バブルバンドオパール名前の由来は?

    残念ながら自信を持って「これだという答え」をお伝えできませんので話半分で聞いてください。

     

    一般的には、この石のルックスを見たマイナー(オパールを掘っている人)たちの間で「単にそう呼ばれ出した」この説が有力です。

     

    ルックスについては、なぜこのような外見をしているのか?

     

    ガス由来の気泡が関係している」

     

    「藻(ストロマトライト)が関係しているんだ」

     

    などなど色々な意見を耳にしますが、これもこれだという答えをお伝えできませんので言及を避けさせていただきます。

    バブルバンドオパールの価値、昔と今

     

    それでは話をバブルバンドに戻しまして、このボルダーオパールの価値に関することを簡潔にまとめ、年表形式でお伝えしていきたいと思います。

    1. 2012年~2013年

    十年一昔、バブルバンドオパールに限って言えば、間違いなくパラダイスのような時代でした。

     

    今では極めて入手が難しいグレードやクオリティのバブルバンドオパールの原石、それらでも行くところに行けば比較的容易に手に入れることができましたし

     

    同じグレードのアインアインストーンの原石と比べると、10分の1ぐらいの価格で済みました。

     

    丁寧にカットして硬い部分だけを使えば状態の良いルースに仕上がる

     

    このまま優秀な標本として見ているのも面白い

     

    何より他の原石よりも圧倒的に安価で入手可能

     

    なぜ皆がこのオパールに手を出さないのか不思議でたまりませんでした。

     

    理由は冒頭で述べたようにきちんとあるわけなのですが、ボルダーオパール枯渇近しと言っても「まだ多少の余裕があり、今から考えると全体的に贅沢な時代だったと思えます。

    2. 2014年~2015年

    2年経ちました、数字で見ると短く感じますが、春夏秋冬を2回ですから冷静に考えると結構な時間の長さです。

     

    下の画像の原石はその当時(2014年)のもので、映えはありませんが動かすとどれも非常に美しく、サイズ感も伝わっていませんが全部でなんと約6.5キロもの重さがあります。

     

    <<オールドストック原石>>

     

    しかしながらこのあたりからでしょうか、バブルバンドオパールの原石をルースに仕上げて「試し販売する人が鉱場町にも出てきました。

     

    それに伴い取引価格は2、3年前の倍となり、「多かれ少なかれ需要が高まってきたんだな」、このように感じたことを覚えております。

     

    ただ倍の価格と言いましても、「同じグレードのアイアンストーン原石の5分の1程度」で済みましたので、価格的にはまだまだ魅力的な時代でした。

    3. 2016年~2017年

    2012年からカウントすると4年、第1次バブルバンドオパールブームと言っては大袈裟ですが、この辺りでこのオパールに関する大きな動きがありました。

     

    「ただの茶色い石?」と思えば動かすと綺麗な輝きを魅せる、気になる部分もあるがこのぐらいなら許せるか

     

    こう感じた方が多かったのでしょう、原石・ルースを問わず、オーストラリア市場にてバブルバンドオパールの人気が驚くほど高まりしました。

     

    オーストラリア各地のジェムショーに出展している友人たちが「このオパール今人気がある」、こう口を揃えて言っていたのを今でもはっきりと覚えております。

     

    そして、このオパールの歴史を語る上で忘れてはいけないことをもうひとつ

     

    遊色(非常に優秀)、サイズ(問題なし)、石の状態(問題なし)

     

    鉱場町にて「このようなグレードの高いバブルバンドオパールのルース」が目に留まり出したのも、2016年~2017年辺りだったと記憶しております。

     

    余談ですが、こうなってしまいますと昔のような価格での取引は不可、「価格はぐっと上昇」・「積極的には原石売ってくれない」etc…のお決まりのパターンとなってきます。

    4. 2018年~2019年

    もうこの辺りでは確実にバブルバンドオパールが日本の市場にて取引されていたと思います。

     

    正確には2017年あたりからオークションを中心に、ちょくちょくと日本市場に出回っていたはずなのですが、当時を覚えている方はいらっしゃいますでしょうか?

     

    裏面やサイドの状態はさておき「発色は悪くない大小あるが平均すると5ct~15ctの重さより想像するぐらいの大きさ、このような特徴を持つルースが出回っていたはずです。

     

    同じ時期、実は当方も下の画像にあるようなバブルバンドオパールを販売いたしておりましたので、状況を比較的しっかりと覚えております

     

    <<ハイグレードS>>

    ウッドオパール?年輪に見えるボルダーオパールの正体は?ハイグレードのルース1

     

    なお、このクラスの石の価格は当時にお伝えしていた通り、2024年現在では優に3倍~4倍の値まで跳ね上がりました。そして今後もさらなる上昇を続けるでしょう。

     

    ※現在コレクターさん所有

    5. 2020年~

    コロナの2年(2020年~2021年)が過ぎ、西暦は2022年もうこの頃には当たり前のようバブルバンドオパールが日本市場にて取引されていたはずです。

     

    ネット販売されているものであれば、大きさ石の状態に関する情報も確認する方が多いと思いますが、その辺の目利き話はさておき

     

    グーグル検索、ツイッターやインスタグラム等のSNSにて、とにかくバブルバンドオパールが目に飛び込んで来る機会が増えました。

     

    長い年月を掛けてじわりじわりと上昇し、ある日突然価格がバーンっと跳ね上がる、これは典型的なボルダーオパールあるあるなのですが、もうこうなったら価値は右肩上がりです。

     

    バブルバンドオパールと言い出したのが2012年、非常に長い年月を要しましたが、無事に日の目を見ることができたのですから一人のファンとしては嬉しい限りです。

     

    以上、「【特集】ウッドオパール?年輪に見えるボルダーオパールの正体は?」でした。完

     

    あっ、どこかでバブルバンドと耳にした時は、この記事のことを思い出していただければ有り難いです。

     

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    記事公開日 2023年5月12日, 最終更新日 2024年1月28日

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